黄色い線の内側までお下がりください


 持っていた赤い小物入れを落とした。

 2、3歩後ろに下がり、動けなくなる。

 目の前にいるのは、

 いる?

 いや違う。


 真っ赤な血みどろの中にぶつ切りになった胴体や腕や脚や髪の毛、細かい肉が沈んでいた。

 髪の毛がかかってよくは見えないが、頭部もあるのが分かる。



 腐っている。

 虫が動き回り、小さい水しぶきを上げていた。

 臭いはそこから来ている。

 甘い死臭は鼻腔に届くと懐かしい気持ちにさせる。




「桜ちゃん」


 後ろから呼ばれて振り返ると、そこにはあざみが不思議そうにしながら立っていた。


「うそ。だって今」


 もう一度振り返り、ぶつ切りになった死体のあった場所を見たが、そこには何もない。


「だって今ここに」

「どうしたの? まるで何か変なモノでも見たって感じ。何かあった? あったなら、相談にもるよ・・・さ、返して」


 手を差し出されて桜は戸惑ったが、出された手のひらの中に小物入れを乗せた。


「やっと戻って来た。ずーっと探してたんだこれ」


 あざみは小物入れの中からはみ出ている金色に輝くネックレスを取りだして、


 一通り確認すると、にこりと笑う。