黄色い線の内側までお下がりください


「桜ちゃんは変わらないね。私をいじめている時もそんな感じだった」

「いじめてなんていない。そう思ってるのはあんただけ」

「そうかな? そうだとしても・・・、最期ってね、けっこう辛いよ」

「知らないそんなの」

「・・・自分のやったことには責任を持って」

「何よそれ」

「まとわりつく? 近づかないで? 何を言ってるの?」



 あざみは視線を桜の足下に固定し、体を左右に揺らし始めた。

 厚めの前髪が顔にばっさりとかかり、顔半分が影になり、表情は読み取れなくなった。




 空が暗くなり、一粒の雨がホームに落ちた。


 そこに黒い水玉を一つ作り、消えた。

 
 また一つ作っては消え、作っては消えて行く。


 雨の臭いが風に乗り、落ちた雨粒は周りにその臭いを撒き散らし、主張する。



 そんな風は、あざみの髪の毛だけを揺らした。