黄色い線の内側までお下がりください




 気持ちが悪い。



 桜の全身に鳥肌が立つ。



「桜ちゃんが持ってたんだぁ、それ」


 返して。と、あざみは細くて白い手をぬるりと伸ばした。


「まだ返せない」

「......どうして? それは私のものでしょう。返してくれるんじゃないの?」

「約束して」

「約束?」

「これを返したら、二度と私には近づかないって」

「よく分からない。どういうこと?」

「あんたが私にまとわりついてるってのは分かってるの」

「......そんなことしてないよ」

「嘘。毎晩毎晩気持ちが悪いのよ」

「ひどい」

 吐き捨てるように、言った言葉はあざみに届いたのかは分からない。あざみは淡々と話し、なんの気持ちもこめられていないからだ。



「あんたはもうこの世にはいないんだよ。だから早くそれを、わかって」

「...」

「これを返したらさっさと自分のいるべき所に戻って!」

「...」

「分かった?」


 桜は目の前にいるあざみの目をじっと見て、強気に出た。