しかし、なんで退避所へ行かなかったのか?

 そこに逃げ込めば間違いなく助かったはずだ。そこへ逃げる時間だって充分にあった。

 でも、そうしなかった。

 最期はどうなったのか見なかったけど、

 電車のブレーキが間に合わずに何かの上を乗っかったってのは、音で分かった。

 前方に真っ赤な血しぶきが上がったし、ホーム上にもそれは届いた。

 それを見た時、私とタイラは怖くて全速力で階段を駆け下りた。

 と、桜は自分は間違ったことをしていないと自分自身に何度も何度も納得するまで言い聞かせた。

 その後、あざみの体ががどうなったのかなんて全く知らないし、噂も耳にいれなかった。いれたくもなかった。

 だから毎日のように大学に遅くまでの残って勉強したし、できるだけ余計なことは考えない時間をあえて作ったりもした。




 そして、昨日までいた猫がまた帰って来なくなった。