線路に引きずられるように落ち行く宮前タイラの白いワンピースは、



 経帷子(きょうかたびら)に見えた。





『ぜんぜん違う。私が求めているのは......これじゃない』




 あざみはタイラをひきつぶして数十メートル引きずり急停車した電車の下で、ぶつ切りになって動かなくなった宮前タイラの腹辺りの赤と白の混じったまだ温かみのある肉の塊を掴み、


 手の中で弄ぶ。



『......うん、違う。これじゃない。こんなんじゃない。私が求めているのはこうもっと違う、そう、違う誰かだ』




 手の中で弄んでいた肉の塊を握り潰すと、真新しく温いべとつく脂をしたたらせた肉を、





 当然のように口の中に放り込み、人の脂でぎとついた手のひらを真っ赤な舌でべろりと舐めた。



 真っ赤な鮮血を止めどなく溢れさせるその肉の塊は、黒い亡霊に喰いつくされ、


 流れ出た血は迷うこと無く真っ青な紫陽花の根元にたどり着いた。