黄色い線の内側までお下がりください


 ーーー両目からブチっという音がして視界が真っ暗になった。

 頭蓋骨はくるみの殻を割るように音を立てて割れ、なかに詰まっている脳ミソは割れた衝動で外に飛び出しぐちゃりと音を立てた。内臓が飛び出ないように覆っている皮膚が耐えきれなくなって弾け、中身は勢いよく外へ飛び散った。

 ベットリとする脂はチキンを食べた時に溢れ出てくるあれにそっくりだ。

 骨がぼきっと折れる音を聞いたが、やはりその音がどこからくるものなのかは分からない。

 柔らかい肉はミンチ状になり、ホームの屋根にとまってじっと待っているカラスのエサになる。

 腸は腹の横からぶしゅっと飛び出し、糞とともに車輪に絡まり引っ張られていく。

 顔面は車輪に引きつぶされた時に逆さまになり、絡まった髪の毛にひきずられるようにレールを舐めながら擦られていき、途中で鼻がもげ、唇が剥がれ、舌が引き伸ばされ、歯が砕け、顔の真ん中から真っ二つに割れ、ミソがドロリとレールにこびりついた。

 引きちぎられた脚は亡霊たちのエサとなり、食いちぎられ骨をしゃぶられた。



 急ブレーキをかけた電車だが、雨に濡れているためいつもよりも止まるのに時間がかかり、その間にも体はぼろぼろになっていく。


 完全に電車が止まった時、そこには無惨にもばらばらになった富多子の残骸が転がっていた。


 止めどなく降り続ける雨が富多子の切断された体を叩きつけ、その雨の重さにより血はよりいっそう溢れだし、辺り一面を深紅に染めた。


 肉の塊となったモノの役目は、喰われることのみだ。