唾を飲み、一度呼吸を整える。
さっきまで痛さのひいていた耳の奥底にまた刺さるような痛さを感じ、はっとしてあざみに視線を向けると、笑顔の消えた顔に冷たく突き刺さるような目で大梯を睨んでいた。
怖さをごまかすため、奪い取るように自分の手中に収めた胃袋は適度な重さがあり、生温くぬめぬめしている。
気持ち悪さはつかんだ指先から伝わる。少しでも力を抜けば滑り落ちてしまうほどにぬるっとした感触。
生臭さが鼻腔に届くその前に、中に入っているモノを何も考えずに飲み込むと、生暖かく甘いトロトロの液体が食道を遊ぶように舐め落ち、胃袋に沈み腹を温かさが襲う。
鼻から抜ける空気に混じって出てくるのは鉄くさい血の臭い。
「ま...さか、これ」
「おいしいでしょう?」
家中の電気が一斉につき部屋の中がぱっと明るくなった。眩しさに手のひらを顔の前にかざせば真っ赤になっている自分の手に驚く。
床に転がっている赤黒いものが胃袋で、そこから流れるくすんだ血に大梯は自分が飲み込んだものを想像して腹をおさえた。
傍らにはおかしそうに笑い続けるあざみの姿。
胃酸が込み上げ、喉の奥が苦い。
ぐえっという不快な音は、吐き出したい衝動。
そして限界に達したとき、目の前に転がる不気味な胃袋の上にすべてのものを嘔吐した。

