もうすぐだ。
手のひらに脂汗をかき、足の裏にも感覚が戻っていることに気づく。
あんなにまとわりついていた紫陽花はあとかたもなく消え失せ、体は軽い。
すぐそこに待避所があってそこに行けば助かるはずだ。
体も動く。
しかし決してそこから動こうとはしなかった。
紫陽花に喰われていたままの姿勢で横たわっている。
『私も死んだらあの霊園に入ることになるのか』
そんなどうでもいい心配事しか頭に入ってこない。
警笛は鳴らされなかった。
富多子は自分が潰される最後の一瞬まで目を見開いておこうと決め、もう一度迫り来る電車を睨む。
どんな苦しみを味わうのか。
どんな痛みが襲ってくるのか。
その瞬間に感じるものはいったいなんなのか。
意識は本当にあるのか。
そして、自分はどこへ行くのか。

