そして、あざみがその手に掴んでいるものは、赤黒い袋状のもの。
富多子の胃袋だ。
滴り落ちる赤い液体は血液。
自分を見下ろしているあざみは朦朧としていて、震える手にしっかり掴んでいるぬめぬめした胃袋は雨に打たれ、ぼこぼこと形を変えている。
起き上がれない。
富多子は身体中を紫陽花に覆われていて、紫陽花の葉は富多子の生きた血液を飲み、深い紫色に葉の色を変えていく。
足首、手首、足の付け根をぎりぎりと締め上げられるが、それすら気持ちよく感じてしまう。
更に強まり出した雨に打たれ意識を戻したあざみは、掴んでいる胃袋を思い出したように見つめ、ゆっくりと顔に近づけ、においを嗅いだ。
自分の胃袋があざみの顔の横にあるのをじっと睨み付ける富多子は呼吸が乱れ息が上がる。
頬に胃袋を撫で付ければ生臭く、胃の上部からこぼれて口に入ってくる生温かい血液は、甘い。
胃袋の表面を長い舌でベロリと舐めればその場所だけ白くなり、そこに、雨に打たれた新しい血液が流れ落ちる。
ぶにょぶにょとした胃袋を一心不乱に舐めるあざみは、止めどなく溢れる血液の虜となっていた。

