「...やっぱり逃げないんだ」
「どういうこと」
「私、間違ってなかった」
「なにそれ、なんなの」
「あなたは......」
にやりと笑うと右手に力を込めて自分の方へ引き寄せた。
富多子の周りが歪み、回転する。
なにか大きな布のようなものが体に巻き付いている感触、高速回転しているので脳ミソが揺れ動く感覚。
あなたは二度と抜け出せなくなる。
回り続ける脳ミソにあざみの言葉が染み込んでくる。
捕まれている腹の部分は冷たく、そして熱くて痛い。
更に体が冷たくなり、頬には刺すような刺激を感じて目を開ければそこには灰色の空。
その空からはあいかわらず垂れ落ちる矢のような雨が目に入ってくる。
見開いた目に刺さるように落ちてくる雨は眼球を刺激し脳を刺激する。
雨の目薬はいつまでも止まず、富多子はその雨を目を大きく見開いて受け入れる。
自分が今どうなっているのか分からない。
雨に打たれている体は震えているが、それすらも心地よい。
肺のあたりが震えて苦しく左右に大きく肋骨が開く。
見えている景色が歪み始め、意識がだんだん薄くなるのを感じて、だらしなくポカンと開いた口を閉じて瞼に力を入れた。

