「さあ、邪魔物は消えた。あとはあなただけ」
聞こえていなかった外の音が再び富多子の耳に届く。
ザーザーと激しく降り落ち地面を容赦なく叩きつける雨は周りの景色を灰色一色に変え、落ちてくる雨は矢のように鋭く、見える範囲一帯は灰色のカーテンがかけられているようだ。
「待って」
左右ばらばらに瞬きをするあざみの目玉はくるくると回っていて狙いが定まらない。
富多子はそれを見極め、逃げられると思い走り出そうとした。
いつの間にか自分の周りには大きな黒い穴が前後左右にぽっかりとあいていて、逃げられない。
「だか......ら、にげられ...ないって......いぃぃぃ...」
最後は言葉にならない。
ガコンと軽い音を立てて落ちたあざみの下顎骨は足元に落ち、その自分の下顎骨を自分の足で知らぬうちに蹴っとばしていた。
蹴ってから気づいたあざみはゆっくりと足元に目を落とす。
「ひぃぃ.........」
富多子は両手で口を覆い、何歩か後ろに後ずさった。
人間、恐怖心が心に宿ったり目の前で信じられないことが起こると息を飲み後ろへ後ずさる。
人間だけじゃない。動物はみんなそうだ。

