「帰ろう!」
手首をがっしりつかまれぐっと引かれ、大梯の胸にすっぽりとおさまった富多子の体に感じたのは、雨に濡れ冷たくなって震えている大梯の細くなった体。
「君が何をしたのかは分からないし聞かないよ。でもそれでも僕は君と一緒にいたいんだ」
しっかりと抱きしめて耳元で囁かれたことばに富多子は涙し、初めて自分のしたことを悔いた。
「......でもね」
「ここから逃げたら、離れたら大丈夫だから」
「わたし...」
「いいから、何も言わず僕についてきて!」
掴んだ手首に力を入れたまま、階段の方へ体を向け、走った。
「...逃がさないって言ったでしょう?」
後ろから間延びした不気味な声が聞こえてきて恐怖に足が震えるが、それを振り払うように頭を左右に何回か振って、なんとか気持ちを奮い立たせた。

