階段を駆け上がる音が聞こえ、富多子は大きくため息をついて胸を上下させた。
そこには一番来てほしくなかった人が、望まない人の姿があった。
「......大梯君、なんで」
膝に両手をつき肩で呼吸をしている大梯の髪の毛はびしょびしょで水滴がとめどなく垂れ落ちている。
風邪をひいてしまう、それでなくても具合が悪いのに。と富多子は思うがそこには体を拭くタオルなんてものは無い。
「富多子ちゃん、ダメだよ、帰ろう」
「...帰れないよ」
「この子のせいでしょ?」
「...見えるの? 見えてるの?」
「見えてる」
大梯が指さしたあざみの顔に表情は無い。今では生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
真っ白い顔に目玉は無く、そこには真っ黒い穴が二つぽっかりとあいているだけだ。
着ている白装束はねずみ色に変色し、ところどころ破れている。
鼻は腐って溶け落ち、鼻のあったところには赤黒い肉がたまっていた。
目の前にいる獲物を逃がすまいとしているが、適度な距離を保ったまま動かない。

