黄色い線の内側までお下がりください


 次は私の番だ。


 本能でそう感じた。


 ここからどうしても抜け出したかった。いや、抜け出さなければならなかった。


 これからも大梯と一緒に残りの人生を歩んで行くためには、こんなところであざみに捕まるわけにはいかなかった。


 そもそも、あざみのことを突き落としたわけじゃない。

 彼女にはまったく関係のないことだ。


「ほら、ここへ来て」


 線路には両手を大きく広げて富多子を呼ぶあざみがいて、その足元は紫陽花まみれで見えなくなっていた。


「いやだ、行きたくない。それに...あんたには関係ない」

「関係あるよ」

「あんたには何もしてない」

「それは関係ない」


 真っ白い体は骨のように細い。不自然に細い首の上には骸骨のように痩せこけた顔。

 その顔は恐怖にも映るしまた逆に切なくも映る。

 儚さの見えるあざみの顔に引き込まれそうになった富多子は意識的に視線を外した。