黒焦げになった桜とタイラが線路の真ん中でゆらゆらと左右に揺れながら立っていた。
うつろな目は光を失い、腹回りの肉が焼け落ち、あばらが見え隠れしている。
激しい雨が肉を更に削ぎ落とし、ぐちゃっと音を立てては枕木の間に落ちていく。
「ほら、みんなこうなる」
耳元で聞こえたあざみの声はぬめぬめしていて気持ちがよいものじゃない。
振り返ると、きれいな笑顔のあざみがすぐそこにいて、本当に死んでいるのかと思うほどに美しかった。
「こっちにおいで」
「...どういうこと」
「あなたはこっちに来なくちゃならない」
「......それ......無理」
「そう?」
意味深に笑ったあざみにぞっとした。
もう一度線路に目を向けたが、そこに桜とタイラの姿ない。どこにもいない。
今まで二人が立っていたところには、不気味に青黒く輝く紫陽花が凛と咲いていた。
富多子はこの紫陽花を見たことがあった。そしてそれは今も消えることなく脳裏に焼き付いている。
自分があいつを突き落としたあの日に、全く同じものを見た。
そして、線路に落ちた者はすべてこの紫陽花を目にして固まることも知っていた。
決して見てはならないものだ。

