黄色い線の内側までお下がりください


「待ってた」


 自分の手の上に置かれた白くて冷たい手に釘付けになった。


 氷のように冷たいその手に温もりは無く、皮膚のようなものから骨が透けて見え、その骨の上を白い虫がうねるように登ってきた。



「何がしたいの」


 富多子はあざみの手を払いのけ、向き合うように素早く立ち上がった。


「待ってただけ」

「じゃあ、もう...これでいいでしょ。私はあなたに何もできない」

「待ってたの」

「だからっ」

「ここからがスタートだよ」



 にたりと笑ったあざみはゆるりと立ち上がり、富多子に手を伸ばしたが、富多子はそれをかわすように横へ移動した。



「スタートってどういうこと?」

「......あるべきところへ戻らないと」

「...何言ってんの」

「私もあなたも行くべきところへ戻らないと」

「行くべきとこ...」

「桜ちゃんもタイラもそこにいるよ」



 桜とタイラと聞いて富多子の動きと呼吸が止まった。


「いるよ」

「......まさか」







「ほら、後ろに」