「あなたはまだ温かいけど、私はもう冷たい。ただそれだけの違い。ほかになんの違いがあるの? 何もない。すぐにあなただってこうなるのに」
腹の中、分厚い胃をぎゅっと掴まれて胃酸が食道を逆に上がってきて喉の奥が熱く苦くなる。
これは夢じゃない、現実なんだと思うと全身に鳥肌と悪寒が浮かび上がり下腹がきゅーっと縮み上がる。
「私たちに構わないで。あの子は自分のやったことの責任を果たさないといけないの」
「...自分のことは...棚に上げ...て?」
掴まれた胃の中から声を振り絞った。
「棚上げ? 違う。私はあの子とは違う。ぜんぜん違う。でも私にはもう時間がないから」
「どういうこと」
「あなたに言う必要は今のところは無い。邪魔をしないでこのままおとなしく帰って。じゃないと、次に会った時はどうなってもしらない。あなたには何もしたくない」
「いまのところ?」
「その時が来たら、私から会いに行く。それが私と会う最期になるはずだから」
胃の中から腕を引き抜くと、大梯の体はふっと軽くなった。
あざみは粘着のある透明の液体が自分の腕にぬらりとまとわりついているのを大梯に見せつけるようにして腕をゆったりと回した。
喉を鳴らすと、動物のように長く伸びた真っ赤な舌で自分の腕ににからまる液体を、舐め取った。

