「うちへ帰ったほうがいい」
大梯の心臓は一度ドクンと跳ね、太い針で心臓を串刺しにされたような鋭い痛みを覚えた。
一度瞬きをした後に目の前にはあざみの綺麗な顔がいきなり現れた。
本当に目の前、わずか60センチの距離に綺麗なあざみの顔があり、真っ白い肌に魅力的な黒い瞳、瑞々しく光る桜色のリップから覗く白い歯にくぎ付けになった。
目の前で妖艶に笑うあざみのおかげで傘をさして歩いている富多子の姿がまったく見えない。
「富多子ちゃんを追わないで、彼女をこのまま私へ返して」
「......富多子ちゃんを、どうするつもり?」
「さぁ。わからない」
「君は...もうこの世にいないんだよ。僕達から離れて行くべきところへ戻って」
「何を言っているのかよく分からない」
くすりと笑うと、骨のように細く真っ白な腕をするりと伸ばし、大梯の顔の前で手のひらを広げた。
びくりとした大梯のことを目を細めて見るとその手を胃のあたりに深く突き刺した。
大梯はあざみの手と腕が自分の腹の中に入ってくる冷たい感覚に襲われ動けなくなる。

