来る。
あざみは線路の上に立っているが、そこから動けない。
膝頭まで紫陽花の葉がまとわりつき、喰われていた。
毒々しく深海のように青黒くなった紫陽花は、富多子を喰うたびに脈打つように花びらを揺らしている。
もうひとり片づけなければならないと言ったあの日から何年が経ったことか。
よくやくその日を迎えることができる。
これで全てが片づくとあざみもまた考えていた。
線路に弾かれる雨粒が待避所の中で丸くなってじっと動かない桜の顔に当たった。
目だけを大きく見開き、伏せる格好であざみに狙いを定めている。
あざみが油断するその一瞬を逃すまいとしているわけだ。油断したその瞬間に食らいつくつもりだった。
「ふんっ。あんたには何もできないのよ」
鼻で笑って一瞥くれるとホーム上に視線を戻した。

