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夕暮れの空は綺麗なピンク色に染まっていた。初夏になる前のほんのひとときに見られる夕焼けだ。
オレンジ色の線がピンク色の雲に細かく描かれ、そこはまるで巨大なキャンパスのように見える。
駅前のコンビニはホームから見下ろされるかたちとなっていて、圧迫感がある。
大梯との待ち合わせは18時だ。おいしいもんじゃ焼きが近くにできたから行ってみようという話になったのは昨夜のこと。
日が傾き、うっすらと夜の闇が天空から降り始め、ピンク色だった空を地平線の下に押し隠そうとしていたころ、1本の電車がするりとホームに入ってきた。
富多子はコンビニの前に立ったままじっとその光景を眺めていた。
いつもと同じように電車が入り、いつもと同じように人をのせて次の駅へ向かう。
電車が通りすぎ、目の前が開けると、そこにはやはりホームが見えていて、
目を見開いてつばを飲んだ。
左胸を抑え1歩後ろに後ずさった。
目の前のホームのベンチに女が一人座っている。
拳をグーにして膝の上に置き、背筋をしゃんと伸ばし足を揃え、顔は下を向いているから表情は分からないけれど、長い髪は前に垂れ下がっている。
風が抜けても髪の毛はなびかない。
どういうわけか、そのベンチには誰も座ろうとしない。
富多子は奥歯を噛みしめ口に溜まった唾液を更に飲み込んだ。
ゴクリと喉が鳴る音が自分の耳に届いた後、鼻から抜ける空気音も耳に入る。

