黄色い線の内側までお下がりください


 そんな時期からテレビでは毎日のように奇怪な事件が起こっていると報じられるようになった。



 どれもみな、『線路に吸い込まれる』という見出しがつき、『また飛び込み』とか、『呪われた駅』とか『怨霊の巣くうホーム』など、書きたいように書かれた。


 もちろん富多子も大梯もそのニュースを目にするようになる。

 あまりにも同じ駅で事件が頻発するため、ホーム以外にはモザイクがかかるようになり、駅名も伏せられるようになった。


 そんなことをしても富多子にはそこがどこだかはっきり分かっていた。


 昨日のことのように、手に取るように鮮明に覚えている。


 喉がごくりと音を立て、唾液は食道を通りぬるく濡れている胃袋に落ちる。




 『見たい』




 抑えられていた欲求が目覚めるように首をもたげ、体全体に鳥肌が立った。


 行けば見れる。しかし、そこに行けば必ずあざみがいる。



 そして、あざみは自分のことを待っている。もしかしたらこれも自分をおびき寄せるための罠なんじゃないかと思うが、欲求は止まることなく加速し続ける。