目玉を口に入れ、舌と上顎で潰すようにして擦る。
ぷちんと何が潰れる音がして、じゅるっとしたモノが口の中に広がり、鼻に残る悪臭を放った。
「甘い」
腐りかけのものが一番甘味があるという。
肉にしても脂にしても、動物は腐る寸前が一番美味だ。
腐りかけの甘い目玉を味わうように舌で何回も転がし、蜜を吸う。
奥歯で噛み潰し咀嚼して...
にやりと笑ったあざみは眼下に群がる亡霊たちを一通り見回した。
「食べたい?」
うー...あー...などと、声にならない奇声を発し、よだれを垂らしながら黄色い線を踏んで歩いていくあざみの姿を追う。
ホームの一番端まで歩いく間、そのあとを亡霊たちもまた同じように着いてきた。
「ほら」
真っ黒い亡霊たちの頭上に先程まで咀嚼していた目玉を血の混じった唾液とともに吐き出した。
細かく噛み砕かれた目玉を我先に奪い合う黒い影の塊を満足気に見下すあざみは何かに気づき、顔を左に向けて、顔を緩ませた。
電車が入ってくるというアナウンスが流れた。
「来る」
べろりと真っ赤な舌で口の回りを舐め、腕をだらりと前に落とし、引きずるような足取りで更に前方へ、ホームの端へと歩を進めた。

