黄色い線の内側までお下がりください


 初夏になり、辺りはじとりと汗ばむ季節に入った。

 富多子と大梯は寝苦しい夜を過ごす毎日を送っていた。大学も休みに入り、お互いにバイト三昧の日々を過ごしながらもお互いの時間を大切にしてきていた。

 休みを合わせて海へ行ったり映画に行ったり、買い物に行ったりと、普通の大学生が送る毎日のように二人もまた同じ時間を色濃く育んできた。


 そんなある日、電車で行かなければならないくらい遠くのレストランで音楽サークルのイベントが行われているということで、二人で足を伸ばそうという話になった。

 富多子はこれといって好きな音楽もないが、女房面をして彼氏の趣味に付き合うのもまた楽しいものだと感じ始めている頃だった。


 始まる時間は午後18時。


 そこに行くためにはあの駅を通過しなければならなかった。

 しかし、途中で降りることはないし、この前行ったときもなにも起こらなかったんだから今回だって何もないだろうと考えていた。