すると、廊下側の窓から顔を出すひとりの男子生徒。

……ついにきたか!?

俺は期待を込めて、満面の笑みで振り返った。

「おぉ小泉、どうした?」

彼は少し言いにくそうに目を伏せる。

「なんか言いたいことがあるんだろ? もう、わかってるって」

俺からの軽い歩み寄りに、小泉は歯を見せて笑った。

「さすが、敬太! 日直の掃除、代わりに頼むな!」

「へ?」

その瞬間の俺の顔が、もし鏡に映っていたら即割ってやる。

「どうしても外せない用があってさ! 次にお前が日直のときは代わってやるから! な、頼むよ」

「え? え? 今日、俺誕……」

「早くしろよ小泉! あ、敬太。まだいたの?」

同じ開いた窓にフレームインするのは、クラスで一番のイケメン男子。

「川本くん……」

「じゃ、そういうことで、よろしく!」

ふたりは颯爽と廊下を走っていく。

「マジ……」

説明するまでもないだろうが、最悪の誕生日だ。

頼まれたら断れない性格を直す。

それを今年1年の抱負にしよう。

「次って……、アイツ、”こ”だろ。俺、”お”じゃん! だいぶ先じゃねえーか!」

出席番号順に回ってくる日直に、ひとり、そんな文句を言いながらも、掃除道具を手に持って教室を掃く。

「おぉー! 大橋、しっかりやってんな。エライぞ」

忘れ物を取りにきた担任の宮内も、今日の日直が小泉だと思い出す様子もない。

百歩譲って、可愛い生徒の誕生日を思い出したら見直すのだが……。

「そういえば、お前……」

……おっと! まさかの?