もちろん、本当にそれをやったら、の話だが。
菊之助は威圧感をすっきりと消し去り、快い少年の面で問うた。
「それにしても、どうして俺を使うんだよ。
よもや迷子になるから、なんて言い出すんじゃないだろうな」
「まさか。
私は人には視えない。
もし春芝がどこかの店でくつろいでたりしてみろ。
私がその傍らで何を言っても、私が不可視なのを良い事に、彼はあたかも、自分が視えぬ者のように振る舞って無視してくるはずだ」
「ああもう、分かった分かった。
要は、俺が春芝を連れ戻す役に回ればいいんだな」
「そういうことだ」
段田がこくりとうなづく。
「面倒くさいなあ、ちぇっ」
ぐちぐちと文句を直言する菊之助だが、すでに話は春芝捜索の方向に進行中だ。
菊之助本人、嫌だ嫌だと口では言うていても、内心は口ほどひねくれてはいなかった。
「君は嘘が下手だな」
柔和に頬を緩めて、段田は目をそばめた。


