人に非ず。 妖にも非ず。 そう言われてしまうと、嫌でも脳裏によぎる顔がある。 人の姿をした、妖のようなもの。 菊之助は妖花屋の帳の前に立つ。 (もしや、旦那の仲間か) 悪魔の類。 菊之助の知る限りは、それしかいない。 この世には海を越えた地に幾つもの大陸や国々があると聞くし、日本とはまた異なる種族の妖がいるのかもしれぬが。 菊之助は妖花屋の帳に手を伸ばした。