「それにしても」
段田は訝しそうに言った。
「む?」
「報酬の心配で、そこまで顔色を悪くする必要があるかい。金の亡者じゃあるまいし」
金の亡者とは失礼な、と思いつつ、菊之助は己の顔色を確かめるように頬に触れた。
「すっ、好きで荒稼ぎしてるわけじゃねえやいっ」
けちくさいが、銭や長持ちする干物は、貯めておくに越したことはない。
宵越しの金は持たねえ、とは言うものの、貯めておけばいつかは役に立つのだ。
しかも佐藤姉妹には養ってくれる者がいないから、なおさらだ。
(自分たちで、自分たちを養ってくしかないんだい)
菊之助は、段田に面を背けた。


