「ところで、旦那は百舌の何を調べてたんだ」

「色々さ。
君は百舌の“はやにえ”をご存じかな?」

「はやにえ?
なんだそりゃあ」

「百舌の習性の一つだよ。
捕った獲物を木の枝先に串刺しにする」
 

百舌のはやにえには謎が多く、その行為は食糧保存のためとも、縄張り意識の強さゆえとも云われている。


「それで、調べていくうちに、百舌と似た点がある人物が浮かびあがってきたんだ」

「獲物を串刺しにする人なんて、いるのか?」

口にしてみて、菊之助はあの地獄絵図の一端を記憶の底から呼び起した。


「そういえば、串刺しはあった!」

「だろう。
もしかしたらそれを行った者の死魂が、百舌に化けたのではないかと思ってね」
 

生ける人には基本、不可能な術である。

しかし死して人外のものとなれば、できぬことはない。

さらに、生前の大きな悪事をしでかした者は、その魂を残したまま悪魔なるものへと変じるという。


「けれどまあ、百舌の居場所は定かではないし、奴が子の方向に逃げたと、口で伝えられても------」
 

そこで、


「おっ!」


段田は瞬いて、早足で暖簾をくぐり抜けた。

おい、まだ話は終わってないぞ。

と、呼び戻そうとする菊之助の手を、段田が優しく引いた。


「おいで。
凄い景色だぞ」

 
菊之助は力なく、すっかり幼気になってはしゃぐ段田の許まで来てしまった。

段田の細い腕など、振り解こうと思えば菊之助にはできたはずだった。

しかし、段田があまりにも、男にしては軟弱なほどに優しい手つきで自分の手を握ったので、思わず菊之助は愕然としてしまった。