「悪いかい」


あしざまに段田は唸る。


「私はねえ、これ以上江戸から妖が消えるのが嫌だから、こうしてあの怪物を退治するべく、調査をしているのだよ。
君が期待していたようなことは、していない」
 

照れくさいのか本意なのか。

段田はそのどちらでもあるようだった。


「だから、もし神隠しの元凶を見つけた時には、君にも働いてもらうよ」
 

頭五つ分の高さまで書物を重ね、段田は下の書庫へと降りる。


(そういえば)
 

菊之助は段田に続いて書庫に降りるなり、その巨大な空間を一目する。

そこでふと、菊之助は考察してみた。


「なあ、旦那よう」

「どうした」

「これだけの数の読み物、いったいどうやって手に入れたんだい。
何百冊も買おうと思ったら、すごく金がかかるんじゃあ……」
 

すると、段田は急に静かになった。


「私は知恵者だと言ったろう」

「お、おう。
でも書庫とは何も関係がないぜ」

「ここはね、いわば私の頭の中と言ってもいい。
千代もの歴史の中で蓄えた記憶を補完するための蔵だ。
つまり、ここにある書物は、すべて私の記憶と知識なのだよ」

「なんだかわからないけど、それも、魔法とかいうやつなのか」

「まあ、深く考えたくないなら、そう思っておきたまえ」


おう、そうする。

菊之助は言いながら、空いているところに書物を詰め込む。