---------そしてかれこれ一刻ばかりを書物の整頓に費やし、菊之助は疲弊して書物の山があった場所に寝そべっていた。
小山を開拓して畑を作った気分だ。
首だけを転がして右手を一覧すると、段田があれだけの書物を収めた黒い棚を開け、がさりごそりと書物を漁っている。
菊之助は飛び起きた。
「こらっ!
せっかく綺麗に片づけたのに、またひっ散らかすつもりか。
もう手伝わないぞ」
「これはいいさ、私が元に戻しておくからね。
それに私は散らかしているんじゃない」
「じゃあ、なにをしてるんだよ」
「見て分からないか。
本を探しているんだ」
そう言って、段田は腰を据えて書物の海に手を突っ込んだ。
「見つけたぞ」
段田が兎を捕まえた虎のように眼を光らせ、勢いよく、手にしたものを引っぱった。
それはなんと、一刻前まで菊之助が地獄絵図だと言っていた、件の本であった。
「これか?」
「うむ」
顎をしゃくって、段田は出された他の書物を棚に押し入れる。
そして用が済んだのか、そそくさと上に続く階段を上っていくのだった。
「旦那。
それ、何に使うんだよ」
菊之助が呼び止めたが、段田は聞こえぬふりをしたか本気で聞こえていなかったのかで、反応もせず地下室から姿を消した。
と、思いきや。
「もう昼九つだ。
腹が減ったろう、食べにおいで」
地上から、段田がそんな面倒見の良さそうな声を掛けてきた。


