たった1人だった家に新しい家族ができて、私はたまらなく嬉しかった。


「よりかちゃん、お腹は空いてない?
欲しいものはない?」


「ありがとう、おばあちゃん。

でも気を遣わなくていいよ。
欲しいものは自分で揃えるから」


どうやら慎みという美徳まで備えているらしい。

だが、喜びで居ても立ってもいられない私は、気を遣うなと言われると焦ってしまう。


「そんなこと言わないで。

遠慮しなくていいんだよ、よりかちゃん。

いっぱい甘えていいの。

私は、よりかちゃんのために何かがしたくて仕方がないんだから」


そう言うと、よりかちゃんは困ったように笑った。


「じゃあさ、私、とりあえずどの部屋で寝たらいい?」


部屋が欲しいということだろう。

この家は一戸建の日本家屋で、今は私達夫婦がいるきりだから、いくつか空き部屋はある。

だが、年頃の娘にふさわしい部屋というと……


「そうだ!

南向きのいい部屋があるよ」


南に大きな窓がある、日当たりの良い素敵な部屋。

本当は、来年度から市内に就職する孫のためにと取り置いていた部屋なのだが、とりあえず孫が来るまではよりかちゃんに貸しても問題はないだろう。