理想の子






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人形(アイジョウ)の真実
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『もしもし、唯香?』


「あ、お母さん。

今、新しいアパートに着いたところ」


『そう。

……おばあちゃん、唯香がいなくなって寂しがってるんじゃない?』


「それはないよ。

おばあちゃんが愛してるのは、私じゃなくてよりかだから」


『そのよりかって、結局何だったの?』


「おばあちゃんの、理想の子だよ。

素直ないい子らしいけど、私から見たら、おばあちゃんの言いなりになってるだけの、都合のいい子だったけどね」


『……唯香はずっと、よりかを演じてあげてたのね。

でも、唯香かよりかかは分からないけど、おばあちゃんはあなたを愛してくれたでしょ』


「そうでもないよ。

本人は愛してるつもりだったかもしれないけど、

本当にその子が好きなら、

大量にご飯を食べ過ぎたせいでトイレにこもって吐き戻したり、

雑な洗濯のせいで服をボロボロにされて泣いているのを見て、

そ知らぬ顔はしないよ。


それどころか、おばあちゃん、よく泣くし。

『喜ばないなんておかしい』って言ってさ。

私が嫌がってるってこと、知ろうともせずに。


おばあちゃんにとって、思い通りにならない『私の意思』自体が、邪魔だったんだと思う。


相手の意思を尊重できないなんて、そんなの愛情じゃないでしょ?

あれは、勝手に作り上げた理想像を押しつける、暴力にも似た実力行使。

ただのエゴだよ」


『……そう。

結局おばあちゃんは、自分の理想だけを見ていたのね。

自分に都合のいい、人形だけを』