理想の子

それ以来、よりかちゃんは目に見えて口数が減っていった。

こちらから話し掛けない限り、めったに口を開かない。


夕飯も、せっかくたくさんよそってあげてるのに、どこからか買ってきたらしい小さな茶碗に、丼から再度取り分けるようになった。

朝も夕も、ご飯を茶碗に軽く1杯と、味噌汁1杯程度しか食べない。


「これも食べなよ、おいしいよ」

とか、

「蕎麦とお寿司と炊き込みご飯とそうめんも食べなさい」

とか、よりかちゃんが1口食べるごとに勧めても、

お情け程度に小さな茶碗へ取り分けて食べるくらい。


こんな様子ではよりかちゃんが病気になってしまうのではないかと心配になる。


事実、よりかちゃんには笑顔が少なくなって、いつも不機嫌そうになり、仕事から帰る時間も日に日に遅くなっていた。


途中で倒れたり、病院に運び込まれてはいないかと気が気ではなくて、

帰ってくるまでは寝ていられず、何度も食事やお風呂を温め直して待ち続ける。


ようやくよりかちゃんが帰宅すると安心し嬉しくて、

「よかったね、ちゃんと帰ってこれたね。

さあご飯を食べて早く寝なさい」
と出迎える、のに。


残酷なよりかちゃんは、「うん」とあいまいな返事をするか、悪い時には

「毎日帰るのも、ご飯を食べるのも、早く寝たいのも、みんな分かり切っていることでしょう。

わざわざ言わなくても大丈夫だよ」


と文句を垂れるのだ。


なんでだろう。

どうしてこうなってしまったのだろう。

私はただ、よりかちゃんと楽しく暮らしたいだけなのに。