理想の子

4月から、よりかちゃんは家を空けることが多くなった。


「どこに行くの」と尋ねれば、笑顔で

「仕事だよ」

という答えが返ってくる。


たぶん、体のメンテナンスのために、定期的に製作会社へ行かなくてはならないのだ。

よりかちゃんは、それを「仕事」と呼んでいるのだろう。


一緒にいる時間が短くなるのは辛かったが、よりかちゃんのためなら仕方がないと我慢する。

それにしても、平日は毎日、それも朝7時から夜7時過ぎまでメンテナンスをするなんて、あの製作会社は不良会社ではなかろうか。


「よりかちゃん、毎日帰りが遅くて心配だよ。
会社に文句言ってあげようか」


6月のある夕飯の時、私はよりかちゃんに提案した。

私は今まで、6時頃に夕飯を食べていたのだが、今年度からはよりかちゃんに合わせて7時半にずらしている。


よりかちゃんはきっと、

「いいの!?
ありがとうおばあちゃん!

私、ずっと仕事ばっかりで辛かったの」

と言って、泣いて喜ぶだろう。


そう思ったのに。


「うん、ありがとうおばあちゃん。

でも心配しなくて大丈夫。
残業なんて少ししかやってないから」


よりかちゃんはそう言って、ただ微笑むのだ。


「全然少しじゃないよ!
私はこんなに心配しているのに」


もっと私を頼ればいいのに。

私に泣き付いて、助けてほしいと甘えればいいのに。


よりかちゃんは、

「大丈夫」

しか言わないのだ。