私は自宅で、テレビを見ながら編み物をしていた。


3月になっても木枯らしは変わらず吹き続き、家の窓ガラスをカタカタ鳴らしている。


もうすぐ80歳の誕生日だというのに、家の中には私1人。

祝ってくれる人は誰もいない。


息子2人は県外の大学へ進学したっきり、そこで就職したり結婚したりした結果、あまり顔を見せに来なくなった。

たまに会いに来るのは、盆と正月くらいだろうか。


長年連れ添った夫は、最近デイサービスの利用を始め、家を空けることが多くなった。


まあもっとも、3人とも家にいたところで、私の誕生日を覚えているかは怪しいのだが。

いかんせん、誰もいないのは寂しかった。