「蒼っ♪」

「ん?」

「だーいすきっ」

「…何回目?」

「うーん…5回目!」






さっきから“だーいすきっ”の嵐。

すっげー素直だよな。

ある意味、感心する。






「んな言わなくてもいい」

「…だって…明日…」

「わかってる。…でも帰ってきた時に聞きたいじゃん?」

「…蒼…」

「すぐ泣くな。…俺の前以外で泣くなよ?」

「わかんないっ…」

「…襲われちゃうよ?お前」

「襲われ…熊?」

「人」

「ひ…と?」

「せっく…」

「あーっ//!もう大丈夫!」






聖也から教えてもらったから覚えてるようだ。

…まぁ嫌でも忘れないな。

まるまんま言ったもんな。

息子とか言えばいーのにな。








「蒼…離れても1ヶ月ごと会いに行くから!」

「んー?半年、会わなくても」

「やっ、やだ!!」






沙耶は本当に素直で甘えん坊だ。

…でもそんな沙耶が可愛くて愛しい。

誰にも見せたくないくらいにな。






――♪〜♪♪


「電話…」

「出ろよ。…俺ケーキ食う」





甘いものが嫌いな俺。

ま、チーズケーキは食える。

んな甘くなくね?…いや甘いのか?

わっかんねぇー…。






「あっ、小夜!」

『さーやー!』

「どうしたの?」

『アメリカ!聞いてないんだけどっ!!』

「う゛っ…」






“アメリカ”だけで言いたいことはわかる。


…つか沙耶は、本当に誰にも言わず行こうとしてたんだな。

なんか…寂しいっつか…イラつくっつか…。






『う゛っじゃないわよ!』

「だって〜…」



半泣きになる沙耶。


…本当に泣き虫。

こんなんで…大丈夫なのかよ…。

…心配じゃねぇか。

1ヶ月ごとじゃたんねーよ…。






『なーくーな!』

「小夜ぉ…」

『沙耶、なんかあったらあたしいつでも駆け付けるからね』

「…小夜…」

『沙耶を苛めた奴なんてあたしがぶん殴ってあげる』

「…うん…」

『沙耶が…寂しかったら…行くから…』

「…うんっ…」

『沙耶が…泣いたら…あたし…』

「小夜…も…いい…」

『沙耶の…1番の…味方だからっ…』






泣く、沙耶と小夜。

いつの間にかこんなに友情が深まるなんてな。

…想定外。






『あ、蒼斗に代わって』

「え?あ、うん」





泣き止むの早くねぇ!?

切り替え能力高っ!

沙耶もちょっと動揺してんじゃん。






「蒼、はい♪」

「お、う…」





沙耶は“ケーキっ♪ケーキ♪”と言いながらパクパク食べてる。


…切り替え能力高いな、沙耶。

女って怖ぇ。