「…沙耶っ…」

「あ、蒼?」






あたしを抱き締める蒼。

蒼があたしを抱き締めるときは、

苦しいときか不安な時。

それかあたしを慰める時。

―……あたしは蒼に抱き締められると落ち着いてしまう。







「…ねぇ聖也、今日は帰ろっか?」

「おう…沙耶連絡くれよ?ラブレター毎日楽しみにして…」



――バシッ…




「…ってぇ…」

「バカ言わない。」






聖也の頭に愛のムチが当たったのは言うまでもない。

2人はきっと、気をつかって帰った。

…ごめんね、結愛、聖也。





「…沙耶がいねぇとか…無理なんだけど」

「あたしもだよ」

「…なんで行くんだよ…」






ねぇ蒼…そんな悲しそうな声出さないで?

そんな…切なそうな顔しないで?

―…期待して苦しんだよ。





「蒼…心配しないで?」

「…心配だよ…お前は」

「大丈夫」

「なにがだよ…鈍感無自覚天然…バカ」

「……うん?」





ちょ、ちょっと待って。

ひとつずつ整理していこうか。

鈍感…?

まったく聞き覚えの“ある”単語だけど、なぜ?

なんで今この状況で鈍感?

そもそもあたしってそんなに鈍感?…結構鋭くない?





「…おーい、飛んでんな」

「……」






そんな蒼斗の声は届かない。


えっと…無自覚?

あたしめちゃくちゃ自覚してるよ!?

それを“無”自覚だなんて失礼しちゃう!

あたしはちゃーんと自覚してるんですぅー。

超ブサイクで地味っ子で…モテキなんて死ぬまで来ない。

そんな女の子なんだよーだ。

…ヤバイ。

自分で言っててなんだか悲しくなってきた。