「…蒼」




俺の背中に回していた腕に力を込める沙耶。

……沙耶?







「大丈夫」

「…え…」

「あたしはどこにも行かないよ?」

「沙耶…っ…」





その言葉がすげぇ嬉しくて。

馬鹿みたいに沙耶を抱き締める。





「蒼の側にあたしは居るから」

「…あぁ」

「だから蒼。…怖くないよ」

「……」






俺の声が震えてた事に沙耶は気付いていたんだ。

…ダサいな、俺。

沙耶に慰めてもらうなんて…。

“沙耶に側にいてほしい”なんて、

ずっと昔から思ってたくせに俺はそんな気持ちを見もせず…。






「沙耶…」

「…うん?」

「やっぱりお前、可愛いな」

「へっ//!?」





ボボッと顔が真っ赤になる沙耶。

そんな沙耶が愛しくて、可愛くて。

…独り占めしたくて仕方ない。

だけどまだ…そんな勇気は俺にはない。






「おだててもなにも出ないんだからっ…」

「はぁー?沙耶になにも求めてねぇよ」

「なっ!蒼に求められても困るもんっ」

「はいはい…」

「あっ、今呆れた!朝起こしに行かないよー?」

「…それは困る」

「えへへー♪」





――ズキュンッ…



お、おい!!

“えへへー♪”とはなんだ!

音符つきじゃないかよ。

…いちいち可愛いな。

くそっ…沙耶に弱すぎだろ、俺。