ケーキ屋を出てから、2人で夕涼みがてら最寄の駅までの一駅分を歩いた。 まだ早い時間に昇った月は、オレンジ色で大きくて、少し恐い。 「なんだか夢に出そうな月ですね」 暗い空を見上げて呟くと、先輩も立ち止まって声を上げた。 「おぉーでっけー月」 その子供みたいな言い方が可笑しくてつい笑ってしまう。 と、目の前が影で覆われた。 顔を上げた瞬間、真正面に立った先輩と目が合った。 そして――