恐怖短編集

そして、微笑んでみせた。


その笑顔が優しくて、また涙が流れ出す。


ダメだ。


これ以上モタモタしていたら決心が揺らいでしまう。


足から崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えて、栞はグッと唇をかみ締めた。


左手で一哉の頭を壁に押し付け、右手に五寸釘を握り締める。


「いやぁぁっ!」


叫び声を上げながら、五寸釘を一哉の額へつきたてた。