フローズン・パール



 昼ごろ、私は立ち上がった。そして精力的に動いて、部屋を片付けだす。

 この6年間の痕跡を消すために。

 私など、元から居なかったかのように。

 自分のものだけを居間の真ん中に集めて、片っ端から段ボールと旅行鞄と紙袋に入れていった。

 もういらないと思ったものは直感で仕分けして、次々ゴミ袋に突っ込んだ。

 結果、部屋の中には5つの段ボールと3つの鞄、大きなゴミ袋が4つ。

 これが6年間の私の存在証明の結晶か。

 私はケータイを取り出して、運送屋さんに電話した。個人で借りているレンタルスペースに荷物を運んで貰うのだ。

 一緒に住んでいた部屋から私の荷物だけが見事に消えてなくなると、私は息を吸って冷蔵庫の前に立つ。

 この部屋に引っ越してきた時は、冷蔵庫は持ってなかった。

 二人で外食して日々を繋げていたのだ。やっときた休みの日に二人で買いに行った冷蔵庫。

『このサイズがいいよ。二人分だし』

 彼がそう言って

『デザインと色は譲れないからね』

 そう私が笑った。

 

 二人で買った冷蔵庫の中には、一人で買い物に行って私が入れた食材達。


 彼が一人でいて、これを使うとは思えない。

 だから、この冷蔵庫を開けるかどうか判らない。それに冷凍庫や野菜庫に至っては、次引っ越すときしかあけないのではないだろうか。