・・・資産、凍結。世紀の大恋愛は、最終的には凍えてしまったわけだけど。
見回した。部屋には今まで私の色もあったけど、今では彼の色しかなくなっている。
泣き笑いのような顔になって、部屋を後にした。鍵をしめて、それを封筒に入れてポストに入れる。
彼は、私が出て行ったことに気付くだろうか。
身も心も焦がす恋で、既に私は灰しか残ってない。
今から思うと、情熱を激しく燃やしすぎたのかもしれない。
あの人の、指も、後ろ毛のちょっと長いところも、大きな足も、傷跡がある右膝も、眉毛を上げる癖も、笑ったときの目じりの皺が深いのも。
愛し過ぎたのかもしれない。
そして、あふれ出して、制御不能で、満ちたりたのが多すぎて、もうお腹いっぱいだったのかも、しれない。
会話もなかったけど。
最後は、既に私すら見えてなかったけど。
でもそれはお互い様だ。見えないふりに聞こえないふり。それはそのまま事実になってしまったのだけれど。
負けず嫌いな私はこう思いたいのだ。
だけど、素晴らしい恋をしたと。



