「章江がお前に会いたがってる」


修学旅行前の、日曜日。
瑠樹亜からの電話。

あたしはのんと街へ買い物に出ていて、ショッピングモールの中でクレープを食べていた。

久しぶりの、のんとのデート。
邪魔されたくなかったけれど。
瑠樹亜からの着信を無視するなんて、あたしにはできない。



「……ごめん、のん」


「いいよ。行っておいで!
向井も部活が終わる頃だし。

瑠樹亜から電話もらうなんてすごいことじゃん。
ひよにしか出来ないことだよ」



のんはそう言って笑顔で送り出してくれたけど。
あたしにしかできないことなのか。
美山さんの話し相手になれれば誰でもいいのか。
よく分からない。


モールの出口でのんと別れて、一人、出口側からバスに乗る。

待ち合わせ場所は少し遠い。
バスで40分くらい。

きっと、美山さんが住む町なんだ。
もう退院したのかな。
そんなことをぼんやりと考えた。