【完】春紫苑







「なにやってる、お前っ!」





その訪問者は果敢に駿に飛び付いて、ナイフを遠くに飛ばし

あっという間に駿を取り押さえてしまった。




カーンと音をたてて床に落ちたナイフ。

やんだ叫び声。






「は……萩野、さん」




それはさっきの無愛想なベテラン刑事さんだった。


さすが刑事。

慣れてる……。



動きに一切無駄がなかった。


駿が抵抗する隙なんて全く無かった。



あまりの唐突な出来事に駿もすっかりと大人しくなってしまった。






「怪我はないかい?」





後ろから現れた安住さんが優しく問いかけてきた。





「はい…ありがとうございました」





私は深く頭を下げた。