【完】春紫苑






「知ってるよ」





そう言ってまた一歩近付く駿。





「さっき言ってたもん。将光を刺したやつなんて殺しても殺したりないって」





そんな物騒なことさえも笑顔で言ってしまう目の前のこいつは、駿なのだろうか?


いや、俺らの知ってる駿は駿であって駿じゃなかったんだ。


でもこいつには良心の欠片もないのだろうか?

ずっと一緒にいた俺らを傷付けるのは、平気なのだろうか。



それほどまで、美琴がほしいってことか。



微笑んだまま、駿が一歩ずつ近付いてくる訳を俺は分かってる。



それは駿のポケットに光るモノを見てしまったから。



それでも俺が抵抗もせず、叫びもしないのは。



俺の声を聞いて、美琴が来たらいけないから。


今、どこにいるかなんて知らないけど

美琴を危険に晒すわけにはいかないから。