「知ってるよ」
そう言ってまた一歩近付く駿。
「さっき言ってたもん。将光を刺したやつなんて殺しても殺したりないって」
そんな物騒なことさえも笑顔で言ってしまう目の前のこいつは、駿なのだろうか?
いや、俺らの知ってる駿は駿であって駿じゃなかったんだ。
でもこいつには良心の欠片もないのだろうか?
ずっと一緒にいた俺らを傷付けるのは、平気なのだろうか。
それほどまで、美琴がほしいってことか。
微笑んだまま、駿が一歩ずつ近付いてくる訳を俺は分かってる。
それは駿のポケットに光るモノを見てしまったから。
それでも俺が抵抗もせず、叫びもしないのは。
俺の声を聞いて、美琴が来たらいけないから。
今、どこにいるかなんて知らないけど
美琴を危険に晒すわけにはいかないから。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)