まず、母さんは知ってたんだ。
榮一さんの秘書が父さんに付きまとってることを。
そして、あの日。
秘書の人が、家に来たのは母さんが呼んだから。
あの日の朝、母さんが言ってたんだ。
今日、これ以上父さんに付きまとうなって話をするって。
そして、分かってもらえなかったり、物凄く憎いと思ってしまって
──刺したらごめんねって。
人殺しになってしまったら、ごめんねって。
だから多分、先に刃を向けたのは、母さんだと思う。
家に電話が何百回もかかってきたり、何か怖い人たちが家に来て脅されたり。
母さん、困り果てて、疲れはてて
もう限界だったんだと思う。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)