【完】春紫苑





まず、母さんは知ってたんだ。


榮一さんの秘書が父さんに付きまとってることを。



そして、あの日。

秘書の人が、家に来たのは母さんが呼んだから。



あの日の朝、母さんが言ってたんだ。

今日、これ以上父さんに付きまとうなって話をするって。



そして、分かってもらえなかったり、物凄く憎いと思ってしまって





──刺したらごめんねって。


人殺しになってしまったら、ごめんねって。




だから多分、先に刃を向けたのは、母さんだと思う。



家に電話が何百回もかかってきたり、何か怖い人たちが家に来て脅されたり。


母さん、困り果てて、疲れはてて


もう限界だったんだと思う。