「おい、城野。何を突っ立ってる、早く座りなさい」
私の方を向いて立っていた城野さんを不審に思ったのだろう。
平田が声をかける。
「あ…はい、すみません」
城野さんは小さく返事をして、席へついた。
………ドクン。
………ドクン。
……何だろう…この違和感。
胸のなかを何とも言えない感情が支配する。
城野さん…
笑ってた。
一瞬だけど、絶対に。
平田に言われて席につくため、私に背を向けるとき。
彼女、ニヤって笑ったの。
笑顔とか、そういうのじゃない。
いや、笑顔なんだけど…何て言うか…。
ゾッとした。
嫌な気しかしない。
彼女……何者なの?
そう思うと、彼女の後ろ姿すら不気味に見えてくる。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)