【完】春紫苑





「おい、城野。何を突っ立ってる、早く座りなさい」





私の方を向いて立っていた城野さんを不審に思ったのだろう。


平田が声をかける。





「あ…はい、すみません」






城野さんは小さく返事をして、席へついた。



………ドクン。


………ドクン。


……何だろう…この違和感。






胸のなかを何とも言えない感情が支配する。



城野さん…


笑ってた。




一瞬だけど、絶対に。


平田に言われて席につくため、私に背を向けるとき。




彼女、ニヤって笑ったの。


笑顔とか、そういうのじゃない。




いや、笑顔なんだけど…何て言うか…。



ゾッとした。


嫌な気しかしない。


彼女……何者なの?



そう思うと、彼女の後ろ姿すら不気味に見えてくる。