「よし……帰るか、美琴」
ゆっくりと私から離れる将光に、キュッて胸が苦しくなって。
離れたくなくて、私はしがみついたまま離れなかった。
「……美琴…」
「何で?」
「え?」
「何で………そんなに優しい声で私を呼ぶの?微笑むの?私のことなんて……どうでも良いんでしょ?
もう、ただの私の……片想いなんでしょ?
私が彼女なのは………榮創高校が私の家が経営してるからなんでしょ?」
ずっと聞けなかった。
口にしたら全てが終わってしまうような気がして。
「…何だよそれ」
上から私に降ってきたのはビックリするくらいに低く、冷たい声。
私以外にその声が向けられたことはあったけど、いざ自分に向けられると、怖くて顔が上げられない。
将光はどんな顔をしてるのだろうか。
でも………これを聞かないわけにはいかない。
私は、聞かなきゃないけない。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)