【完】春紫苑






「よし……帰るか、美琴」






ゆっくりと私から離れる将光に、キュッて胸が苦しくなって。


離れたくなくて、私はしがみついたまま離れなかった。





「……美琴…」



「何で?」



「え?」



「何で………そんなに優しい声で私を呼ぶの?微笑むの?私のことなんて……どうでも良いんでしょ?



もう、ただの私の……片想いなんでしょ?



私が彼女なのは………榮創高校が私の家が経営してるからなんでしょ?」






ずっと聞けなかった。

口にしたら全てが終わってしまうような気がして。







「…何だよそれ」






上から私に降ってきたのはビックリするくらいに低く、冷たい声。


私以外にその声が向けられたことはあったけど、いざ自分に向けられると、怖くて顔が上げられない。




将光はどんな顔をしてるのだろうか。


でも………これを聞かないわけにはいかない。


私は、聞かなきゃないけない。