「母さん……母さん」
目の前の由季さんは、いつもの由季さんで。
もう、喋らないなんて
動かないなんて
嘘じゃないかと思うほど
綺麗で。
だけど、手に触れると冷たくて。
"死"という現実を突き付けられる。
「なぁ……母さん。母さん……。
目開けてくれよ……。なぁ、母さん。いつもみたいに将光って呼んでくれよ。母さん……母さん……』
将光はその場に崩れ落ちた。
「将光……っ」
そんな将光を私は抱き締めることしか出来なくて。
どんな言葉も、間違いな気がして。
ただ、抱き締めることしか出来ない。
「将光……」
貴方の名前を呼ぶことしか出来ない。