【完】春紫苑





"彼女"


これは、よく言われる台詞。


だけど、こんなに真剣に真っ直ぐ言われたことなんて、多分ない。




それだけなのに、信じられないくらい私には嬉しい。



高鳴る鼓動が何だか心地いい。




だけど私のそんな想いはよそに流は表情を変えずに淡々と話を続ける。





「……毎日苦しませて、悩ませて。挙げ句の果てに泣かせてるくせに。

ほんと、良くそんなこと言えるよね」







流…………?


一体、何がしたいの?


何をするつもりなの?


わざわざ将光の気に触るようなこと言って、どうするつもり?



第一、私が毎日、苦しんでることも、悩んでることも泣いてることも、

どうして、知ってるのよ。



知ってるなら、知ってたなら。


どうして今まで、将光を止めてくれなかったのよ?